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zoom RSS 2016年 日本近代文学会関西支部春期大会 連続企画第二回趣旨・発表要旨・講演者プロフィール

<<   作成日時 : 2016/04/29 21:36   >>

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連続企画
「《異(い)》なる関西─1920・30年代を中心として─」

第二回「根(ルーツ)を問う」

趣旨文

 連続企画第二回では、人々の出自や故郷が持つ記憶=「根」と、関西との関係を、文学から問いたい。
 関西の特定の地域で生まれた、という出自の問題は、時に人々を差別や暴力にさらし、 人々に「根」との対峙を強いてきた。企画の一つの軸は、抗いがたい運命のようにつきまとう、この「根」の問題と葛藤する方法を、文学、あるいは文字表現はいかに用意したのか、あるいはその葛藤をどのように表現してきたのかを考えることにある。
 また、関西には、生まれた場所から離れ流入してきた人々が集い、自分たちの生きる場所を作り上げた、そのような空間が散在している。自らを〈異〉なる者として規定する視線にさらされながら、そこにいる人々は、文学によって、どのように自分たちの場所を確保したのか。この問いが、もう一つの軸となっている。それは言い換えれば、「根」から切り離された空間において共同性を確保する、という営為と、文学がいかに関与したのかを問うことでもある。
以上の問題を、「《異》なる関西」という標題で括る暴力性そのものを再検証しうるような議論の場としつつ、場所と人とに積層する記憶を掘り起こし、そこで生じた文学と、人々の生のあり方を凝視すること。このような狙いから、連続企画第二回を開催したい。

発表要旨

 金達寿における関西
 ―〈神功皇后の三韓征伐〉と「行基の時代」

廣瀬 陽一

 在日朝鮮人作家でのち古代史研究家となった金達寿(一九二〇〜九七)は、一九三〇年に渡日して以後、神奈川県や東京都内で暮らし、関西に生活の根を下ろすことはなかった。だが彼の知的活動に目を転じると、関西ほど関係の深い地域はない。彼と関西との出会いは小学五年生の時に授業で教えられた〈神功皇后の三韓征伐〉に遡る。多くの朝鮮人と同様、当時の彼も民族的劣等感を抱いて苦悩したが、やがてこの劣等感が客観的事実ではなく、植民地生活の中で〈三韓征伐〉的発想を内面化した結果と認識するようになった。そこで彼は日本の敗戦=解放後、まず文学活動を通じて自分の内なる〈関西〉と闘争した。そして七〇年頃から徐々に活動の舞台を古代史に移し、そこでも〈三韓征伐〉などで表現された日本と朝鮮、日本人と朝鮮人との関係を、いかにして人間的なものにするかを探究した。彼の最後の小説「行基の時代」(七八〜八一)は、その可能性を追究した果てに書かれたものに他ならない。
 このように関西は、金達寿にとって知的活動の原点であると同時に、文学活動の終着点となった場所でもある。むろん両者の間で〈関西〉が意味するものは異なる。原点としての〈関西〉は〈三韓征伐〉的発想の中で表象される権力の中心であり、終着点としての〈関西〉はその中で消されたもう一つの姿である。では彼はいかにしてもう一つの〈関西〉を見出していったのか。本発表ではこの過程に焦点をあてて述べたい。

 織田作之助と川島雄三
酒井 隆史

 作家織田作之助と映画監督川島雄三についてお話をさせていただきたいとおもいます。この二人は、関西と東北という出身地の大きな違いにもかかわらず、みじかいあいだとはいえ、深いまじわりを交わし、たがいの創作、とりわけ川島雄三の映像作品に消しがたい刻印をもたらしました。大谷晃一さんは、この二人についてみごとな評を残しています。「川島は大正七年に、青森県の下北半島にある田名部(たなぶ)町の商家に生まれた。現、むつ市。先祖は近江商人という。幼時に小児麻痺をわずらい、足が不自由だった。深刻なコンプレックスを内に秘めながら、表面はむしろ陽気で軽佻だった。寂しがりやの照れ屋である。人のことを気にして調子を合わせた。昔気質の人情家で、古風な立身出世への憧れがあった。自虐的な汚らしさの中に、人の悲しみを表現しようとした。驚くべきことである。それは、作之助そっくりだった。たちまち、心の通じ合う友人になる」。このような人間的共鳴をきっかけにして、織田作之助の死後、川島雄三は、みずからに織田作之助のもたらした刻印とはなんだったのかを測定するかのように、いくつかのこの作家に由来する大阪を舞台にした作品を撮影しつづけます。それを追っていきながら、ここでは、川島雄三によって折りひらかれた織田作之助の大阪について考えてみたいとおもいます。

講演
 『京都』について

黒川 創

プロフィール
 作家・評論家。一九六一年生まれ。京都市出身。同志社大学文学部卒業。「思想の科学」を舞台に評論活動を展開するとともに、一九九一年「若冲の眼」で小説家としてデビュー。以後『もどろき』(二〇〇一)、『イカロスの森』(二〇〇二)、『明るい夜』(二〇〇五)、『かもめの日』(二〇〇八 読売文学賞受賞)、『いつか、この世界で起こっていたこと』(二〇一二)、『暗殺者たち』(二〇一三)などの小説を次々に発表。芥川賞、三島賞等の候補にも数次にわたり推挙される。
 小説の他、『〈外地〉の日本語文学選』全三巻(一九九六)、『鴎外と漱石のあいだで―日本語の文学が生まれる場所』(二〇一五)など外地文学に関する精力的な評論・創作活動を展開し、東アジア全域を視野に入れた日本語文学史の再検討を試みている。また『きれいな風貌 西村伊作伝』(二〇一一)や、大逆事件を扱った『国境〔完全版〕』(二〇一三 伊藤整文学賞受賞)など、関西の文化風土に対する著作も多数発表している。

今回は京都の被差別部落を舞台とした小説『京都』(二〇一四 毎日出版文化賞受賞)を中心に、「《異》なる関西」の相貌についてご講演いただく予定である。
◆『京都』(二〇一四年一〇月三一日 新潮社 一九四四円+税) ISBN: 978-4-10-444407-6

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