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zoom RSS 2015年 日本近代文学会関西支部秋季大会 シンポジウム趣旨・発表要旨

<<   作成日時 : 2015/09/22 11:21   >>

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連続企画(第一回) シンポジウム 「《異(い)》なる関西─1920・30年代を中心として─」

趣旨
 本企画は、関西の文芸文化の中でこれまで必ずしも光が当てられてこなかった対象――人・風土・メディアなど――を新たに考察・評価する試みである。ただ、本企画は、埋もれた対象の発掘作業に終始するものではない。その狙いには、自らの居るこの「関西」という場所自体を批評的に問い直し、既成の史的枠組みや知識で捉えられてきた関西における文芸文化の姿をも再考することを含んでいる。これまでの認識に揺さぶりをかけるような「《異(い)》なる関西」を探求することで、新しい文学観や地勢図が開かれるかもしれない。
 その検討に際し、ひとまず中心とするのは、1920・30年代である。この時期、大規模な経済的、社会的変動を背景としてモダン文化が勃興したことはよく知られているが、関西ではどのような動きがあったのだろうか。たとえば、佐藤春夫や稲垣足穂と関係の深い神戸の詩人、石野重道。彼はどのようなメディアに自身の作品を発表し、また、いかなるネットワークの中で活動していたのか。そして、彼(とその周囲の表現者たち)を創作へと駆り立てたエネルギーとは、いかなる強度と広がりを持つものであったのか。――一つの事象を核として明らかにされていく、まだ知られていない関西文芸文化の側面は、他にも多くあるだろう。
また、この時代の前後に、その検討対象を準備/継承/更新したものがあるのならば、それも議論の範囲に含めてもよいだろう。「関西」を軸に、既成の枠組みを問い直すダイナミズムやドラマを掬い上げることで、「関西」自体が内と外との双方に対して、その《異(い)》なる相貌を現すことを企図している。
支部内外からの様々なアプローチによって、新しい知見が議論を通して得られることを期待している。

発表要旨

一九二〇年代〜三〇年代の大阪文化・文学研究―『大阪時事新報〈文芸欄〉』を視座として―
増田 周子

大阪市は、大正一四(一九二五)年四月一日、東西南北の四区に周辺地域を合併し、東京市を抜き、世界第六、日本第一の巨大都市となった。「大大阪」時代の到来である。大正一二(一九二三)年の関東大震災で東京が大打撃を受け、谷崎潤一郎ら有力作家が関西に移住し、関西にとっては文化発展の絶好のチャンスであった。「大大阪」時代前後は、カフェサロンに集まった人々が担った文化活動も発展し、活気づいた大阪の様子が見られ華やかである。一方、昭和金融恐慌の時期とも重なり、失業者も増え、厳しい面も見られる。すなわち、モダニズム文学の隆盛の一方で、社会主義文学も発展していく状況下なのである。これら、「大大阪」時代周辺の大阪文化や文学―人・風土・メディア─とはどのようなものであり、作家達を創作へと駆り立てたエネルギーとは、いかなる文化強度に支えられていたのであろうか。本発表では、これまでほとんど取り上げられてこなかった『大阪時事新報〈文芸欄〉』をもとに、その他のメディアでの文化活動も視野に入れ、広く大阪文化やメディア作家を見渡し、興味深い点を拾い上げて考察していきたい。当時の大阪文化を見直すことで「《異》なる関西」の諸相を探求することを目的とする。

昭和初期・神戸の文学青年、及川英雄――文学における中央と地方
大東 和重

近代日本において「文壇」と呼ばれるものは東京にあった。しかし地方都市にも、規模は異なるが文学愛好者たちのつながりがあり、文学活動が行われていた。ことに高等教育機関の整備が進み、同人雑誌が盛んに刊行される一九二〇年代以降、中央からの刺激を受けつつ、各地で無数の文学青年たちが活動した。
本報告では、昭和初期の神戸で、公務員として働く傍ら文学への情熱を燃やし、東京の雑誌や同人雑誌にも関わった、及川英雄(一九〇七─七五年)の活動の輪郭を描きつつ、関西の港町にあって創作することの意味を考えてみたい。及川英雄は関西学院大学神学部を中退後、同人雑誌などで文筆活動に励むも、一貫して神戸に住み、衛生・福祉行政を中心に県庁勤務を四十年間続けた。戦後は神戸の文化人サークル「半どんの会」の世話役として兵庫文化界の中心人物の一人となった。
昭和初期の神戸の文学については、林喜芳『神戸文芸雑兵物語』や足立巻一『親友記』など当事者の回想以外に、宮崎修二朗の労作『神戸文学史夜話』、高橋輝次の『関西古本探検』など一連の古本エッセイ、さらに詩人の季村敏夫による、無名であることにこだわった渾身の考証、『山上の蜘蛛』『窓の微風』がある。これら、神戸の詩人や作家たちへの深い愛情と哀悼に満ちた書物に導かれつつ、昭和初期・神戸の文学の一端を、及川を通して眺めてみたい。

熊野新宮─「大逆事件」─春夫から健次へ
辻本 雄一

 紀伊半島の先端近く、ひとつの町・熊野新宮の近代の歩みが、「日本近代」の縮図として映らないか─そんな「大風呂敷」。
 開明的、進取の精神が、反骨の精神と相まって、人々を捉える、そこに「大逆事件」の衝撃。外から訪れてくる人たちによって談論風発した町が、「恐懼せる町」に変貌、ふるさとから上京した人たちは、モダニズムと出合う、「大逆事件」の翳りをどこかで引き摺りながら。佐藤春夫から中上健次へ、「近代の文学」といわれた時代を駆け抜けたこの町出身の文学者たち。
「中上文学」の登場は、あらためて「熊野」と言う場を、普遍的な場として意識させ、内在的に「熊野」の磁場を問いかけることになった。「中上文学」の課題「路地解体」は、わが国の国土解体の象徴では。
 一九二〇―三〇年代というかたちで、絞りきれないかもしれないが、断片的、大まかすぎると自覚しつつ、幾つかのエポックを辿ってみたい。「大風呂敷」に似合わない些末なことに終始するのではないかとの危惧を抱きながら。

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